【テファリキ】ニュージーランドの幼児教育カリキュラムを現地幼稚園教諭が解説

この記事では、テファリキ(Te Whāriki)とはいったいどういったものかを、詳しく説明させて頂きます。

  • テファリキに興味のある方
  • テファリキの内容を知りたい方
  • ニュージーランドの幼児教育について関心がある方

に是非読んで頂きたいです。

ゆめこ

筆者のゆめこは、ニュージーランド現地公立幼稚園で勤務する幼稚園教諭です。

現場で実際に使っている経験、情報も交えて説明させて頂きます。

 

 

この記事で分かること

 

テファリキって何?

 

テファリキはニュージーランドの、幼児教育のカリキュラムのことです。

 

テファリキは0歳から小学校に入るまでの子どもたちのための教育課程で、ニュージーランド全国の幼児教育施設(保育園、幼稚園、プレイセンターなど)や機関で使用されています。

 

最近では、ニュージーランドだけではなく、世界中各地で大変注目を集めています。

テファリキの執筆者でもあり、ニュージーランドの幼児教育の先駆者であるマーガレット・カーさん(Margaret Caar)や、ウェンディ・リーさん(Wendy Lee)は、国内、外でテファリキについての講習、講演などを積極的に行っています。

 

 

パパ

ニュージーランド豆知識

ニュージーランドでは大抵の子どもたちが5歳の誕生日を迎えると、各々に小学校に入学し、初等教育(小学校6年間)を開始します。

日本のように皆が参加する、入学式はありません。

小学校に入学する時期は子どもたちの親又は保護者の任意となる為、6歳の誕生日を迎えるまで、幼児教育が受けられるシステムになっています。

 

ニュージーランドの教育のことを詳しく知りたい方は
外務省の公式サイトを参照されて下さい。

 

 

 

テファリキはいつ、何故作られたの?

 

 

テファリキは、初版が1996年にニュージーランド政府、教育委員会によって策定されました。

 

ニュージーランド国内の様々な幼児教育施設が、質の高い幼児教育カリキュラムを、常に提供していけるように、明確化、統一化を図るためでした。

2017年には初版が修正され、テファリキ2017として改訂版が出版されました。

 

テファリキ2017が初版のテファリキと違う点は、主に2点あります。

 

学びの成果(Learning Outcomes/ラーニングアウトカムズ)が118項目から20項目になった

 

教員(Kaiako/カイアコ・マオリ語)の役割の重要性、そして教員がいかに二分化主義(英語・マオリ語)多文化社会への順応性を子どもたちに教えていけるかが重視されるようになった

 

根本的なものは変わっていません。

 

テファリキ2017は、英語、マオリ語両方の言語版になり、英語版の裏を返すと、マオリ語版となります。

 

マオリ版テファリキ

 

パパ

ニュージーランド豆知識

マオリ語は、ニュージーランドの先住民であったマオリ族が話す言葉で、ニュージーランドでは、英語と同様に公用語とされています。

ニュージーランドの教育現場では、マオリ語をいたるところで使っていて、幼児教育の現場でもマオリ語、英語2か国語でのサインが所々に見かけられます。

 

 

ゆめこ

ゆめこが実際に使っている、テファリキです。初版は大学時代を含め、19年近く愛用していますので、かなりボロボロです。

新しいテファリキがでてからも、常に一緒に持ち歩いています。

テファリキのことを十分理解することが、ニュージーランドの幼児教育現場で働く教員にとっては第一条件になります!

 

 

 

 

 

テファリキの特徴は?

テファリキの冒頭部分では、テファリキの基本方針(ビジョン)として、

 

This curriculum is founded on the following aspirations for children:
to grow up as competent and confident learners and communicators, healthy in mind, body, and spirit, secure in their sense of belonging and in the knowledge that they make a valued contribution to society(Ministry of Education, 1996, p. 9).

 

“全ての子どもたちが

「才能、自信に満ち溢れる生徒、コミュニケーターとして成長し、心身、精神ともに健康で、グループに属しているという安心感を抱きつつ、自分は社会に対して貢献できると感じる」

そうなるためには、実際にどうしていったらいいのかという、具体的な実現方法をこのテファリキというカリキュラムの中で述べている”

と書かれています。

(子育てブロガーゆめこ日本語訳)

 

 

テファリキは、子どたちやその家族が属するコミュニティーに密着しつつ、子どもたちを色々な視点からとらえて、全体的に(ホリスティックに)その個人を理解していくようにと推奨しています。

 

教員は子どもたちの個性を伸ばしながら、子供主体の学習環境を提供していきます。

 

子どもたちは、自分自身で

  • 不思議に思うこと
  • 学びたいこと
  • 解決しなければいけないこと

を見つけ出し、自分なりに、自分の周りと交流をしながら、解決策を導いていきます。

 

 

ゆめこ

テファリキでは教員の役割がとても重要視されています。

教員が一方的に、子どもたちに何かを教えるのではなくて、一緒に学びかつお互いに成長していく過程は、テファリキが他とは異なる、ユニークな特徴のひとつでもあります。

 

 

 

テファリキの重要ポイント、4つの原則 (4 Principles)と5つの要素(5 Strands)って何?

 

これらはテファリキを構築している基盤のコンセプトであり、キーワードです。

ここで詳しく説明していきます。

 

テファリキの4つの原則 (Principles)

 

Empowerment(エンパワメント)

テファリキは子どもたちが自分の力で学び育っていく手助けをする

 

Holistic Development(ホリスティック・デベロップメント)

テファリキは色々な視点から子どもたちが学び成長していく姿を捉える

 

Family and Community(ファミリー・アンド・コミュニティ)

家族とその家族が属するコミュニティーはテファリキの中で最も重要な役割を果たす

 

Relationships(リレーションシップス)

子どもたちは人間関係、場所、物事を通して相関的に学びを得る

(子育てブロガーゆめこ日本語訳)
4つの原則の英語はMinistry of Education(2017)Te Whārikiより引用

5つの要素(Strands)

 

Well-being(ウェルビーイング)

子どもたちが健康で幸せであると感じる環境の中にいる

Belongings(ビロンギングス)

子どもたちとその家族が安心を感じ、仲間意識をもっている

Contribution(コントリビューション

子どもたちは平等な学びのチャンスを与えらえ、一人一人の貢献が評価される

Communication(コミュニケーション)

子どもたち自身、また子どもたちをとりまくすべての言葉やカルチャーが守り育てられる

Exploration(エクスプロレーション)

子どもたちは自分の周りのことを、積極的に探求しながら学んでいく

(子育てブロガーゆめこ日本語訳)
5つの要素の英語はMinistry of Education(2017)Te Whārikiより引用

ゆめこ

大学時代の講師にこうして使うといいと、勧められた使い方で、ゆめこの初版のテファリキの最初の見開きのページには、このようなチャートが張ってあります。
一目見て、テファリキの4つの原則 (4 Principles)と5つの要素 (5 Strands)がわかります^^

 

Te Whariki 

テファリキ全文(英語)を閲覧されたい方はこちらからどうぞ!

 

テファリキの名前の由来は?

テファリキとはマオリ語です。

英語ではwoven mat、日本語に訳すと敷物となります。

 

 

テファリキは、すでに説明させて頂いたように、4つの原則 (4Principles)と5つの要素(5Strands)のコンセプトから成り立っています。

 

テファリキカリキュラムはこれら、すべてが絡み合い、織りなされて初めて成立する為、その概念を象徴して、テファリキと名づけられました。

 

 

パパ

ニュージーランド豆知識

  • Whāriki (ファリキ・woven mat・敷物)と
  • Raranga (ラランガ・weaving・織る/編み込む)

はマオリ文化を象徴する、とても神聖なコンセプトです。

ニュージーランド幼児教育には欠かせない、テファリキがこれらのマオリ語に由来しているのは、素敵だね!

 

 

 

テファリキはどのように使われているの?

テファリキはニュージーランドの幼児教育現場で働く教員にとってバイブル、なくてはならない教科書のようなものです。

それぞれの幼児教育現場では、テファリキを軸として、その現場にあった教育方針を決めています。

 

教員はテファリキを元に、子どもたちの学習過程を記録し、子どもたちの最大限の可能性を引きだしていきます。

 

教員は子どもたちがまだできないことではなく、

⦁ 興味を示していること
⦁ 挑戦しようとしていること
⦁ 得意な分野

 

をきめ細かい観察眼を向けて、特に見つけ出します。

 

そして、子どもたちの能力、発達をどのように、最大に伸ばしていけるかを熟考し、学びの場をデザインしていきます。

 

子どもたちが園に通い始めた最初の期間は、5つの要素のうちの最初の二つの要素 Well-being(ウェルビーイング)とBelongings(ビロンギングス)に焦点をあてて、子どもたちを観察していきます。

ニュージーランドでは子どもの成長、学びの記録をラーニングストーリー(learning story)と呼び、ポートフォリオ(portfolio)という子どもたち各個人の記録ファイルを作成していきます。

 

 

パパ

ニュージーランド豆知識

ここ10年程は、オンラインポートフォリオといってオンラインに記録を載せて、お子さんの家族が、携帯、IPad、コンピューターから手軽にすぐアクセスできるようになりました。

ニュージーランドではStorypark(ストーリーパーク)またはEduca(エデュカ)というプロバイダーが主流で使われています。

日本ではkidsly(キッズリー)アプリのようなものです。

 

 

ラーニングストーリーのことを詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ

 

ラーニングストーリーって何?ニュージーランドで働く幼稚園教諭が解説します

 

 

ラーニングストーリーのことを詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ

 

ニュージーランドの幼児教育現場で使われているポートフォリオって何?

 

 

ストーリーパークのことを詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ

 

ストーリーパーク日本語版、デジタルラーニングストーリーを検証

 

 

ゆめこ

テファリキは発達心理学者のユリー・ブロンフェンブレンナー(Urie Bronfenbrenner)が提唱した、生態学的システム理論(簡単にいうと子どもを取り巻く環境がいかに大切かを説いている)がベースになり、構築されています。

幼児教育、心理学を勉強された方は、聞いたことがあるとても有名な心理学者さんですね。

 

 

まとめ

この記事では、ニュージーランドで使われている幼児教育のカリキュラム、テファリキ(Te Whāriki)について解説させて頂きました。

 

4つの原則 (4 Principles)と5つの要素(5 Strands)を含めたテファリキのコンセプト、特徴も理解していただけたかと思います。

 

 

筆者のゆめこは、ニュージーランド現地公立幼稚園で勤務する幼稚園教諭であるため、現場で実際に使っている経験、情報も交えさせて頂きました。

 

 

ゆめこは、テファリキは子どもたちの探求心、独創性を常に向上させる、ユニークな幼児教育カリキュラムだと信じています。

そして、それはまさしく、子どもたちが成長していく上でとても重要な自主性、主体性を育てる教育法ではないでしょうか?

 

 

追記

(2021年1月26日)

Kei-tua-o-te-pae(ケイ・トゥ・ア・オ・テ・ パエ)「地平線を越えて」について

ニュージーランドの幼児教育機関に配布されているKei-tua-o-te-pae(アセスメント事例集・評価手引書)
の詳細はこちらからアクセスして頂くことができます。1巻から20巻まで全てのダウンロードが可能です。

 

Kei-tua-o-te-paeのことを調べていく過程で、飯野祐樹さんが2010年に執筆された

ニュージーランドのナショナルカリキュラム
“Te Whāriki”に基づいた保育評価に関する研究
― Learning Story と Kei Tua o te Pae に注目して ―

という論文を見つけました。

10年以上に書かれたものなので、現在の状況とは少し異なっていることもでてきています。

けれど根本的なことを理解されたい方には、とても分かりやすい文献です。

是非参考にされてみて下さい。

読者様から、お問い合わせを頂き追記させて頂きました。

 

ご意見、ご感想、また質問のある方は、こちらの方からお問い合わせください。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

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参考文献
Ministry of Education. (1996). Te Whāriki. He whāriki mātauranga mō ngā mokopuna o Aotearoa Early childhood curriculum. Wellington: Learning Media.

Ministry of Education. (2017). Te Whāriki. He whāriki mātauranga mō ngā mokopuna o Aotearoa Early childhood curriculum. Wellington: Ministry of Education.

 

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