子育てブロガーゆめこです。
この記事では、ニュージーランドの幼稚園で取り組まれているサスティ ナブルな試みについて紹介していきます。
この記事で紹介させて頂くニュージーランド、オークランド市にある幼稚園は、ゆめこがが勤務している公立の幼稚園です。
それでは環境教育に力を入れているニュージーランドの幼児教育現場で、どのようなサスティナブルな取り組みが行われているのかを見ていきましょう!
サスティナブルって何?
日本語の直訳は”持続可能”となりますが、分かりやすく言い換えると、
環境とそれを取り巻く社会に優しい状態を、持続しているとなります。
今現在の環境を守りつつ、私たち人間が環境と共存し、住みよい社会を作っていく状況・状態のことを意味します。(サステナブルと表記されることもあります。)
簡単にいうと、日本でも盛んにいわれているSDGsのとりくみと同じ意味になります。
ニュージーランドの幼稚園でのサスティナブルな取り組み
エンバイロスクールプログラム(Enviroshools Programme)
自然豊かなニュージーランドでは、その自然を守るために、環境教育に力を入れています。
エンバイロスクール(Enviroshools)は1993年にハミルトン市で発足し、2001年からは国を挙げて推し進めているプログラムです。
義務教育期間(小、中、高)中に、教育科目に組み込まれ授業の一環として教えられます。
10年程前から幼児教育施設でも使われるようになりました。
エンバイロスクールの公式サイトによると、ニュージーランド全国の小、中、高校の40%、幼児教育施設の12%がこのエンバイロスクールプログロムに参加しているとのことです。
エンバイロスクールプログロムについて詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。
ゆめこの幼稚園では具体的にどんなことをしているの?
ここからはゆめこの勤務する公立幼稚園で実際に子どもたちが毎日取り組んでいることを紹介させて頂きます。
リーダーがゴミを指定された場所に捨てにいく
教員によって、もしくは子どもたちの立候補によって毎日2、3人のリーダーが選ばれます。
リーダーの仕事は園で出たゴミを捨てる作業になります。
園内には、大きなゴミ箱はなく、子どもたちが持ち運びできるような小さなゴミ箱が種類別にいくつか設置してあります。
埋め立てゴミ、不燃ゴミ、紙のゴミ、コンポスト用、ワームファーム用、ボカシ肥料に分かれています。
ゴミ箱には写真のラベルが貼ってあるので、まだ字の読めない子ども達でも、どのゴミ箱にどのゴミを入れればいいのかが分かりやすいようになっています。
このリーダーのシステムの導入によって、子ども達はごみの種類を学び、ゴミの選別の仕方を体験していきます。
そして、どうすればゴミを出さないようにできるかを日々学んでいます。
ワームファーム(ミミズが食べ物を分解し、堆肥を作ります)
グリーンビン(庭で出たゴミ用)写真左
コンポストビン(微生物によって植物や食べ物などの有機物が分解され堆肥となります)
リーダーの子ども達は颯爽とマントを身に着け、リーダーとしての仕事をこなしていきます。
裁縫の得意なお母さんがマントを作ってくれました。
バッジ、ベストなども試しましたが、子どもたちにはマントが一番人気でした
ランチボックスの中身にはできるだけゴミがでないようなものを入れる
子ども達は毎日、お弁当を持参します。
ニュージーランドではランチボックスと言い、日本のお弁当箱とはかなり違った形式なものを使っています。
ランチボックスの中身には出来るだけゴミの出ないものを入れてくるようにと、入園の際に保護者、子どもに伝えられます。
サンドイッチやおにぎりなどは、サランラップを使わないで、ビーズワックスラップ(beeswax wrap)や紙で包むようにしたり、もしくはランチボックスに直接入れます。
ビーズワックスラップ(beeswax wrap)とは?
コットンに蜜蝋(beeswax)を染み込ませたもので、 洗って何度でも繰り返し使えます。
自然素材の食品保存用のラップのことで、サランラップの代用として使えます。
包装されたお菓子は避け、小さい入れ物(container)などにいれるようにします。
小分けのヨーグルトなども、プラスチックのゴミが出てしまうため、出来るだけ避けるようにしています。
園児たちが持ってきているランチボックスの例です。
無駄をなくし再利用を心掛ける
家庭から集められた卵の殻や、園で使ったコーヒー豆の粉カスは、なめくじ、カタツムリなどの害虫よけとして、園庭の植物の周りに撒きます。
捨てるものをいかに少なくして再利用していけるかを考えるようにしています。
又、保護者の方に呼びかけ、家庭から集めたリサイクルできるものを園に持ち寄ってもらい、子どもたちが園で使います。例えば空箱、ワインのコルク、ガラスの瓶などです。
ガーデンからテーブルへの教育(Garden to Table Education)
園には、アボカド、西洋なし、フィジョア(ニュージーランドのフルーツ)、パッションフルーツなどの果物や、ジャガイモ、ニンジン、ほうれん草などの野菜類、又様々な植物がところ狭しと、植えられています。
子ども達は園でとれたフレッシュな食べ物を使い、スムージーを作ったり、フルーツティ、ドライフルーツ、ハーブを入れたスコーン(焼き菓子)など、様々な食べ物を作る体験をしています。
園庭でとれたものを調理してキッチンのテーブルで食することをガーデンからテーブルへの教育(garden to table education)と呼びます。
園には大きなオープンキッチンがあるので、子ども達はほぼ毎日料理の体験を楽しんでいます。
(昨年からの新型コロナウィルスのアラートレベルにより、調理ができない日もでてきています)
追記:(2023年5月現在)
新型コロナウィルスの規制も緩和され、園児たちは毎日のように、クッキングアクティビティを楽しんでいます。最近人気があったメニューは、園庭でとれたシルバービートなどの緑の野菜やフルーツを混ぜて作ったスムージーや、簡単に作れるパンです。
生命・自然の循環サイクルを学ぶ
ガーデニングが子どもたちにとって身近なものになるように、色々な工夫がしてあります。
ガーデン用の子どもの手袋や、シャベルは子どもたちが自分でいつでも使えるように、背の低い棚に収納してあります。
水やりや雑草取りも子ども達の仕事です。
園で栽培している、食物から種を収穫し、そしてその種から苗を育てる経験もします。
園で育てられた苗は各家庭に持ち帰られ、子どもたちはその苗を家族と一緒に育てていきます。
ガーデニングの体験を通し、身の回りの環境を維持する具体的なやり方、又生命の循環サイクルを学んでいっています。
家族ぐるみの勉強会
子どもだけではなく、保護者、家族皆が参加できる勉強会も行っています。
エンバイロスクールナイトなどと称し、園が終わってから、ウエットバック(濡れた洋服を入れる防水バッグ)やビーズワックスラップの作り方を紹介しながら、一緒に作ったりします。
保護者用の勉強会、例えばコンポスト用のゴミ箱の作り方などを専門家にサポートしてもらいながら、教員共々一緒に学んでいくという機会もあります。
又、市役所の環境担当の方たちを、園に招待して、子どもたちのためのスペシャルプログを設けたりもします。
例えば、どうやったら水を無駄にしないかということを、子どもに分かりやすいように教えるために、参加型の劇を見ます。
節水の方法や、浄化のシステムを、子ども達自身が劇に参加しながら学んでいきます(例えば子ども達自身が水の雫になったりしながらです)。
子どもたち、保護者、そして教員皆が経験を通して、サスティナブルな活動を学んでいっています。
二酸化炭素の排出を防ぐ努力をする
子ども達が園にきて最初にすることは、自分の名前のカードを探すことです。
そして、そのカードは自分たちがどのような交通手段(車、バス、自転車、スクーター、徒歩)をとったかによってボードに仕分けされます。
例えば、歩いてきたら、歩いている人の絵が乗っている場所に自分の名前を張り付けます。
ニュージーランドでは日本のように自転車があまり普及しておらず、車の移動がほとんどです。
それでも、ゆめこの園では保護者の方も、自転車(バイク)で通園される方もいます。
子どもたちは、綺麗な空気を保っていく為に、出来るだけ二酸化炭素がでない、交通手段をとっていくようにと教えられています。
園庭で使う水は雨水
園庭で遊ぶ際に使う水は、雨水を貯めたタンクからの水です。
雨水タンクと、園庭にある2か所の給水ポンプが繋がっており、子どもたちは自分たちでポンプの水を汲み、砂場で遊んだり、植物に水をあげたりします。
子どもたちはある一定量の水を使い切ると、その後は水が使えなくなることを知っています。
水の大切さを遊びながら学んでいます。
要らなくなったおもちゃ、本などの再利用
園で使わなくなったほとんどの物は、他の幼稚園などで再利用されます。
捨てる前に一度再利用、リサイクルできないかを考えます。
ニュージーランドでは、このように幼稚園児から環境と共存していくことを学んでいます。
(レデュース)Reduce; 無駄をなくす
(リユース)Reuse; 最利用
(リサイクル)Recycle; 再循環
この3つのポイントは園でのカリキュラムと連携して、子ども達に日常的に教えられています。
園の年長の子ども達はリサイクルできないゴミ(landfill埋め立てゴミ)は、地球の環境を汚してしまう、悲しいゴミと認識しています。
この小さいころからの意識の持ち方は、サスティナブルな社会を保っていく為に、とても重要なことだと思っています。
He waka eke noa (マオリ語)- ‘we are all in this together(英語)’ みんなで一緒に
2020年に制作された、各地の幼稚園でのエンバイロスクールの取り組みを録画したビデオです。
英語ですが、画像を見て頂くと子どもたちの取り組みが詳しく分かります。
↓
以上になりますが、ニュージーランドの幼稚園で取り組まれているサスティ ナブルな試みについてどう思われましたか?
その他、ご意見やご質問がございましたら、ゆめこまでお気軽にお問い合わせください。
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こちらの記事もどうぞ
追記
ストーリーパークさんのフェイスブックページにゆめこの記事が紹介されました。
日本語版デジタルラーニングストーリー、ストーリーパークの記事を読まれたい方はこちらからどうぞ
子供達が日々の幼稚園生活の中で、遊びながら学べるって素晴らしいですね。子供達自身でお料理使って食べたりとか、とっても楽しそうです。
ついつい、便利で簡単な物を使ったり買ったりしてしまいがちで、
ゆめこさんのこのブログを拝見して大人の私も考えさせられる内容もありました。
息子が保育園に通っていますが、残念ですが
ここまで素晴らしい環境下にはないと思います。
世界中全ての保育園、幼稚園でこの考え、取り組みが普及してほしいですね。
園庭でとれたものを使ってのお料理はもちろん、巻き寿司、餃子、チャパティなど、子どもたちのアイデンティやカルチャーの背景を反映した料理も、保護者の方たちも交えて色々と作っています。
私も園で寿司を作るようになってから、大分うまく巻き寿司が作れるようになりました。
ぷりんさんがおっしゃる通り、世界中でこのような取り組みをおこなっていくと、ゴミも減るような気がします^^
やっぱり、キンディの環境は素晴らしいですね!
Garden to tableは三男が去年、小学校でやってて、いつも楽しみにしていました!
あれのおかげで沢山、お野菜も食べれるようになったって、いう親御さんの声も聞きました!
コメントありがとうございます。
ニュージーランドの役半分くらいの学校でエンバイロスクールプログラムが教えられていることは、とても誇らしいことですね。こどものころからの、意識の持ち方の大切さを本当に実感しています。
私も自分の息子たちから、『水がだしっぱなしだよ』とか怒られることがあります。
子ども達が学校で習ったことを色々と教えてくれるので、一緒に勉強しています。
設備がとても整っているように感じました!わたしが働くKindyは規模が小さいので、Yumekoさんが勤務される幼稚園のような取り組みはないですが、素敵な取り組みだと思いました。小さい頃からの体験を通して、根付いていくのよいですよね。
みわぱんださん、小さいころからの経験って本当に大切ですね。私も今の園で働くまでは、エンバイロスクールの存在は知っているものの、詳しいことはわかりませんでした。ここ5年程エンバイロスクールプログラムを使っていますが、奥が深くいまだに色々学ぶことが多いです。ワークショップに出向いたり、オンラインで常に、チームと一緒に勉強しています。
子どもたちが毎日の生活の中に取り入れている活動はとても興味深いですね。活動が「当たり前」の事として身についていくことはとても重要だと思います。自然環境の問題は子どもたちの未来の問題でもありますから。
敦子さん、メッセージありがとうございました。
そうですね、サスティナブルな活動が「当たり前」のこととして、身につくのはすごいことだと実感しています。
またニュージーランドの幼児教育のことで何かご質問ありましたら、メッセージくださいませ。
ニュージーランドの幼稚園の取り組みが具体的に紹介されていて理解しやすく、日本の幼稚園保育園が参考にすることができるとても意義のある文章ですね。
本当に一度見学に伺いたいです。
私どもが運営するどろんこ保育園においても雨水ドラム缶、コンポスト、ヤギ糞鶏糞の堆肥、給食残飯の堆肥化など行っていますが、子どもたちが意味を理解するまでのものにはなっていないように思います。今後の参考にさせていただきます。
また、法人としてもSDGsを意識した取り組みをさらに積極的に実施していこうと考えております。
https://www.doronko.jp/ どろんこ会ウエブサイト
T様 、素晴らしいですね。
どろんこ会、どろんこ祭り、コミュニティをあげての、盛り上がりはとてもすごいと思います!!!
みならいたいです。
最近クラブハウスを始めたのですが、またルームを作って、情報交換の場を作れたらいいですね!
iphone USER の方はすぐ入れます。
これからも素晴らしい活動応援しています。
ゆめこ
ニュージーランドの環境教育のブログ、拝見させて頂きました。正直、とても驚きました。幼稚園児がそんなことできるんだ!という驚きです。そして、そう感じてしまう私は、SDGsの考え方が身に付いていないのだろうなとも同時に思いました。凄すぎます。
名古屋の教員みんなで視察に行って意識を変えないといけないよなと(私も含めて)思わされました。そして、畑や果樹など素晴らしい環境があることは、とてもうらやましいです!
日本の小学校でも、SDGsの考えを取り入れた新指導要領というものが2020年度に始まりました。(10年に一度ほど、指導要領という指導の指針の書かれた先生向けの資料が、改訂されています。)
家庭科の教科書や道徳の教科書にSDGsという言葉や意味は載っています。指導要領にもSDGsの言葉は多く載っているように感じます。
しかし、実践という意味では、ほとんどまだ何も行われていないような感覚があります。職員室で、ペーパーレスは進んでいますが、教室では、何も変わっていませんし、保護者も、ギガスクールプランという、一人一つタブレット端末が配布される取り組みなどのデジタル化や、英語教育、プログラミング教育など、新たに導入されるSDGs以外のことには大変注目してくれていますが、SDGsに関しては今ひとつです。
コンポストの設置…とまではいかなくとも、敷地内の落ち葉を集めて腐葉土作り、教室でのゴミの分別指導など、初歩的すぎる活動ですが、それくらいなら各学校規模でも、始められると思うのですが、コロナ対策でそれどころではない雰囲気でもあります
教員として、日本でできることは何んだろう…と考える日々です
夢子さんの参考になることは、何一つお伝えできず、申し訳ありません。が、これが日本(名古屋)の現実です。
こんな何かコメント頂けたら、幸いです。
Yoshi-chanさん、フィードバックありがとうございます。
家庭科や道徳の教科書には載っているけれど、実践されてないというのは、興味深いことでした。
小学校ではどの科目でどのように教えているのかが知りたかったので。
なかなか、生徒たちと実行に一緒に実行に移していくというのが難しいという感じですね。
環境教育も、学校全体、先生と生徒が一丸となって取り組んでいかないと、うまくいかないでしょうし、お金と先生たちのエネルギーもいりますよね。
指導要領もあるのですね。
お互いのおかれている立場で、出来るだけのことを子ども達にしていきましょう。
Yumeko
ゆめこさん、お久しぶりです。
ゆめこさんの幼稚園の取り組み、すごく素敵だなと感じました。
以前ミミズのカーロという本を母から見せてもらい、これは自分が幼稚園を作ったらぜひやりたい活動だなと思っていたので、実際にやられているのを見てとても感動しました。
最近の日本は子供だけでなく大人でも虫や土が苦手な人が多いので、自然とそれらを好きになってもらえる方法でもあるのかな、と個人的に思っています。
私が通っていた高校にはインターナショナルクラブという部活があり、私も所属していたのですが、そこでは毎年メキシコの高校生と協力してSDG’Sをより多くの人に知ってもらうための作品を創作していました。元々は全学年の生徒で実施していたみたいなのですが、人数が多すぎると大変なので、今は部活内で行っています。
夏休み中も登校し、メキシコの生徒とスカイプで会話しながら、今世界で起こっている環境問題やジェンダー問題、飢餓問題などについて深く議論をし、ひとつの絵のイメージを固めます。それを元に絵の半分ずつをそれぞれの国が担当し、メキシコから送られてきた半分の絵を日本側が描いた絵と合わせて完成します。
幼稚園でどのような活動が行われているのかはわかりませんが、私の通っていた高校ではそのような活動がありました。参考になれば嬉しいです。
みなみちゃん、コメントありがとうございます。そしてこの記事を読んでくれてありがとう。
ミミズファームは、定期的に園庭の真ん中に持ってきて、園児に中身がどういう風になっているのかを観察させたりもしています。私の同僚たちはミミズをわしずかみして、園児に見せたりしてます。
ゴミが分解されるときにでるミミズのジュースも、ビンに詰めて、液体の肥料として園児がうちに持ってかえったり、園庭で使ったりしています。
日本の高校でのSDGsの取り組みのこと、シェアしてくれてありがとう!!素敵ですね。みんなで半分づつ作るアートは本当に特別なものだと思います。私はSDGsのことあまり詳しくなくて、最近クラブハウスで日本での取り組みなどについて話したり、聞く機会がありました。サステイナブルなことを話すルームを開催させてもらったりして、こちらの取り組みを紹介していったりしています。まだ自分たちでは2回しかルーム開催してないけどね。
It is so nice to hear from you again, Minami chan. Please keep in touch and don’t be shy to ask me any questions. Arohanui